2024年12月特集号

ダイヤモンドを拾う

ダイヤモンドを拾う

松原 惇子

先日、赤坂で毎年開催しているカントリー音楽の仲間のライブに行ってきた。
あまりカントリー音楽が好きではないが、家族ぐるみの夫婦が主催しているので、ひとりみの私は古い縁を大事にしようと、誘われれば必ず参加することにしている。
来る人はほとんどが顔なじみだが、皆80歳前後のいい年になったせいか、ドアを開けた瞬間、ここは老人ホームか?と見間違ったほどだ。
わあー頭が真っ白だ。自分も高齢者なのに他人ごとのように言うのをお許しください。

でも、音楽という共通の趣味で集まるって素敵だ。会場は若者のライブ会場のように明るい活気で包まれていた。
男性陣は、学生時代からバンドをやっている人達ばかりなので演奏も歌もうまい。ヨレッとした85歳だという人も歌いだすと別人になった。外で会ったらスルーしそうな高齢の人も(失礼をお許しください)ここではかっこいい!!音楽と共に人生を歩んできている人は幸せだなと思う。人生に音楽は必要不可欠だ。老後も認知症も関係ない。久しぶりに私の心は高鳴った。

「じゅんこちゃんも歌えば」と幼馴染に促され、何年か前までは、1曲だけ練習して歌わせてもらっていたが、カントリーは自分らしくないとわかり、今は観客に徹している。
しかし、その夜は、85歳のかっこいい姿を見て大いに刺激され、「ひとりでピアノを弾いている場合じゃないわ」と、ライブをやる気になっている自分にびっくりさせられた。この間までは、いい年してライブはみっともないからやらないと断言していたのに・・

ああ、人生、どこにダイヤモンドが落ちているかわからない。探しているときは見つからないが、期待していない所に落ちているものなのだ。だから、人に誘われたら断らずに行った方がいいと思う。
もし、私が、カントリーは好きでない、高齢者なので帰りが遅くなるのは嫌だという理由で誘いを断っていたら、「また、ライブをやろう」という気にはならなかったはずだ。私は、あの夜、ダイヤモンドを拾ったのだ。

再来年は、ちょうどSSSネットワーク創立30周年にあたるので、派手にデイナーショーでもやって、越路吹雪を歌おうかしら。二の腕が振袖だろうが、ドレスがぴちぴちだろうがそんなことはどうでもいいわ。みんなで楽しいときを過ごしたい!!
ちなみに私の芸名は「こしじしぶき」。先の楽しみを見つけたので、その日までは、明るく前向きに生きていけそうだ。