体も心も余剰なものを溜め込まない暮らしを!
体も心も余剰なものを溜め込まない暮らしを!
今年の夏は暑かった。
雑草がぐんぐんと伸びて、私は庭の草刈に必死でした。
今から思えば、炎天下で汗をかきすぎた…。
その結果、汗と一緒に気が抜け出てしまったのでしょう、ちょっと動いただけで汗が噴き出す、疲れて何もする気が起きない、口をきくのも億劫、舌をみると端がぎざぎざの歯根という状態で、これはまさしく「気虚」。
気が不足している!
気の生理機能には5つあります
教科書的にいえば、次のとおり。
もっとも、始めからこんなにきちんとしたものがあったわけでなく、何千年の歴史の中でそれぞれの医家たちが考えてきたことをまとめて「現代的に解説するとこうなる」としたのがこれ、ということですね。
1) 推動作用
気のエネルギーは、成長や発育、臓腑や経絡などの活動、血や津液の生成と散布、排泄などを動かしています。
これが弱まると、老化が加速したり、血液循環や水液の停滞などをまねきます。
私の場合は、水液が停滞して熱で濃縮され、痰になったのかな?ねばねばの痰がしつこく出ました。
2) 温煦作用
からだを一定の体温に温める作用。
気に温められないと手足が冷えます。高齢になって気が衰弱するとからだが冷えてきますよね。
逆に、気が集まって散らずに鬱滞すると発熱してきます。気虚発熱といいます。
疲れると熱がでる。忙しすぎるとほっとした瞬間に熱。オーバーヒートしているな、と感じます。
3)防衛作用
からだの周りには気場があります。体表にある気。
これがウイルスや細菌などの外の邪気を防衛しているわけです。
昔の気功師は気場が強かったので、疫病が流行っている地域に入っても大丈夫だったといいます。
3) 固摂作用
気は、血や津液などの液状物質が通路を外れないようにしています。
高齢になると、ぶつけた覚えがないのに手足のあちこちに内出血する方がみられます。
固摂作用が弱くなったのでしょうね。
私の場合は、夏に汗をかいて気を消耗し、汗が漏れ出てしまい、ますます気を消耗する、という悪循環でした。
不思議なことに、からだの輪郭がぼやけてきた、という自覚がありました。
気が集まって形をつくっているのが緩んできたような。
形が崩れる!これって気が不足したせいですかね?わかりません。
4) 気化作用
体内の物質代謝のこと。物質とエネルギーの相互転化をさしています。
昔の医家は、代謝を“気化”と表現していました。意味深い言葉です。
「気が流れている」という健康状態を目指そう。
現代科学では、このシステムがだいぶ解明されてきました。
食べるということは他の生物を消化吸収すること。
他者の情報を自分のからだにあう情報に組み替える必要があるということだそうです。
肉も野菜も果物も、そのままでは人の消化管を通過できずアミノ酸にまで分解して初めて細胞内に取り込むことができ、人のからだ向けに再合成される。
「コラーゲンをそのまま皮膚のしわに届けようと思っても無駄。足りない部分があれば外から取り入れて補足すればよい、というのは、生命を部品が組み合わさった機械仕掛けと捉える発想からくる幻想にすぎない」と福岡伸一先生は語っています。
『動的平衡』(福岡伸一著 小学館新書)という本にこの辺りのことが書いてあります。かなり面白い本ですからお勧め。
ところで、気というものは昇ったり降りたり、出たり入ったり、常に動いていることが基本です。
この昇降出入のバランスが崩れたり、からだの中で流れが滞ると病理状態になるわけです。
気が滞って流れなくなると「気滞」、昇ばかりで下降できなくなると「気逆」、下降が激しくなると「気陥」、気が体内から抜け出すと「気脱」、体内で固まってしまうと「気結」「気鬱」、程度が酷いものは「気閉」。
「気滞」とは、気の流れが滞ってスムーズに流れなくなること。
感情の鬱積、痰や湿、胃もたれ、瘀血などが詰まって局部の腫れや痛みが出てきます。胸が詰まった不快感は、げっぷが出たりおならをすると楽になります。詰まった栓を抜いた、ということでしょう。
「気逆」とは、気が上に昇ってしまうこと。
肺気が上に昇ると咳が出る。胃気だと悪心、嘔吐、げっぷ、しゃっくり。肝気だと頭痛、顔と目が赤くて怒りっぽくなる。症状はすべてからだの上部に出てきます。
「気陥」とは、気が上に昇る力がなくなった病理状態。
内臓が体内で下がらずに済むのは、気の引っ張り上げる力によります。この気が弱くなると胃下垂、腎下垂、子宮脱等が起こります。頻繁に便意が起きたりも。
「気閉」とは、急に気が途切れてしまうこと。
高熱や精神的な打撃で失神するなど。「気脱」は大出血や大汗によって血や汗と一緒に気が抜けてしまう危険な状態。
どちらも普段みかけることはあまりないでしょう。
ところで、「気虚」というのは気の運動が異常になる上記とはちょっと違います。気が不足した状態。
症状は、精神疲労、動けない、無力、息切れ、しゃべるのが億劫、ちょっとしたことで汗が出る、めまい。
これらの症状は、動いたときに悪化します。
舌が淡い色で、舌が腫れぼったく膨らんで歯根(端がぎざぎざ)ができます。
鏡をみて自分の舌をチェックしてみてください。
舌の色が淡白で、舌の端がぎざぎざになって膨らんでいたら気虚かも。
でも、どうして気虚になるのでしょうか?
生まれつき虚弱、或いは食べ物から気を生み出す機能が低下して、気が作り出せない場合。
または、長い病などで気が損傷した、過度の労倦によって気が消耗し、気が回復できない場合。
老化による精気の衰退が起こっている場合。
やれやれ、ですね。
でも、やれることはある!気功はもともと“不老長寿”を目指してきたのですから。何千年もの長い間の気功師たちの体験が詰まった貴重なもの。
200歳までかくしゃくとしていたという中国の清朝時代の仙人の記録があるのですから。
希望をもって、すごい、あはは、です。
ところで、気はひとつではないのですよ。あれ?
『黄帝内経』には、気という文字が数多くでてきますが、それぞれに意味するものが違う。後世の医家たちも混乱していたのですね。『黄帝内経』の気を分類しようと試行錯誤しているようです。
全体の一気、陰気、陽気、臓腑の気、衛気と営気、宗気、真気…まだまだ出てきます。
ただし、治療にたずさわらない限りは、こうした気の分類はあまり関係がないと思いますが。
中医学にはモノサシがたくさんあります。現代物理学のように、ね。場面、場面でどのモノサシを使うか自由自在になれば、名医です。
このモノサシの多様性が、正解はひとつ、と教育されてきた“科学の子”の私たちには受け入れがたい。
「さっきの説明と違う。中医学はいい加減だ」となるわけです。「見る角度が違うから」と中医学の教授はいつもいっていました。
人はなぜ病気になるのか、なぜ治るのか、正反対の治療法でそれぞれに効果があるのはなぜか?
つまるところ、人間とは何か、健康であるとはどういう状態か。老いるというのはどういう意味か。その先には何があるのか。医学は哲学だというのは、本当だなあ、と思うこの頃です。
国際中医師 国際医学気功師、国際中医薬膳師。
50カラット会議時代から週1回私たちに気功指南して、現在は水曜日10時からオンライン講座がある。