2024年10月号

「気」はエネルギー。穏やかな気から健やかさをもらおう。

「気」はエネルギー。穏やかな気から健やかさをもらおう。

「ヨガをやっているんだったわよね?」と聞かれて「いやあ、気功なんですけど」と何度いい直したことか。
一般的にみれば、ヨガと気功は同じイメージなのですかね?
気功のことを「体操をやっているでしょ」という人もいました。確かに、形だけみれば体操でしょうねえ。

気功の特徴は“気”です。では、“気”とは何か?
実際に気功をやれば、気を確かに実感できるのですが。でも普通は目に見えないので“気”を証明するのは至難のわざです。
荒唐無稽な怪しげな話、といわれるわけだ。
今回はとりあえず“気”について文字で書いてみますね。

紀元前の春秋戦国時代の哲学者は、宇宙は気が集まってできていると考えました。
気が集まれば形になる。人も動植物も、万物は気が集まってできています。
しかも、気は個別に塊として存在しているのではなく、すべてがつながっているので、天体が動けば人の体にも影響があります。
台風が近づいて低気圧が通れば頭痛がする、雨が降れば浮腫みがでるし、眠くもなる。
不安でいっぱいの人の前に行くとなんだかイライラしてしまうことはありませんか?
表面的にはいつも通りの普通の人なので、なぜ自分がイライラするのかもわからない。
これは、他人の不安定でゆがんだ気が伝わってきて、自分の気が影響を受けてしまうからです。
逆に、気が穏やかな人のそばにいれば自分の気も平穏でゆったりできる。

私たちのからだの周りには自分の気場が張り巡らされています。
頑健な若い人たちは気場も元気で強くて層が厚いので、あまり他人の影響を受けずにすみますが、気持ちが弱ったときや病気のとき、高齢になった時などは、気場も衰弱して層が薄くなるので、他人の気の侵入を受けやすくなります。
穏やかで優しく包み込むような人を選んで会いましょう、というわけです。

中医学を学ぶときに「気は人体を構成する基本的な“物質”である」と習いました。
気はエネルギーだ」とも。
気は哲学の概念です、ということでしたが、私はこの頃、これは単なる哲学の概念ではなく、もっと実際的なものではないか?と思うようになりました。

そう思うのは、脳科学者の体験と神経解剖学者の実験の記述を読んだからです。
中国の気の捉え方とあまりにも似ているので、やっぱりね、と思いました。

『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』(ジル・ボルト・テイラー著 新潮文庫)の中に、大脳の左半球に大出血を起こして左脳が機能不全に陥ったときのことが書いてあります。
「周囲と自分を隔てる境界を持つ個体としての存在として、自己を認識できません。
脳の中の方向定位連合野(体の境界、空間と時間)が壊れてしまったので、他と自分を分ける感覚がない。
自分が流体のように感じています。
私たちは静かに振動する何十兆個という粒子なのです。
細胞が群がる生命の集合体。
あなたと私の間の空間にあるようにみえる粒は、原始的な物体とエネルギーでできている。
異なる存在は、異なる密度の分子で構成されている」。

これは、気功の静功で座禅をしているときの状態でしょうか。
考えるな、雑念を浮かべるな、おしゃべりな左脳を黙らせろ。
左脳の働きを極度に抑えると出てくるのが座禅の境地ですか。

もうひとつ。
『命の輝き フルフォード博士が語る自然治癒力』(ロバート・C・フルフォード翔泳社)という本に、生命の場についての実験の話が出てきます。
エール大学医学校の神経解剖学の教授のバー博士が、人体が電磁エネルギーに浸透され、取り囲まれていることを立証した話が書いてあります。
最初は庭の桃の木に電圧計の電極をつけて数年間観察したところから始めた実験だそうです。
開花や落葉、太陽の黒点活動、月の満ち欠け、雨や雪などの気象の変化に対応して、木の電位が細かく変動していたというのです。
人の体もしかり。人間が病気の時には電位が変わる。
臨床的にその病気が発見されるずっと以前に電位に変化が生じていたとも。
つまり、生命場は周波数の高い電磁場という特徴を持っているということ。
バー博士は、それをいつも「肉体を組織化する場」、つまりその生命場は物質的なからだがこの世に出現する前に姿を現し、成長する生物の原子や分子を導いて正しい形に組織化していく役割をはたしているのだと。
フルフォード博士は、あらゆる生き物は、宇宙に遍満している電気的な生命力の流れとともに脈動しているといいます。
この振動、波動は常に動いていて、オステオパシー医のフルフォード博士が患者のからだを触っていると、生命力の流れがブロックされているのを指先で感じることがある。
からだの一部の振動が弱いきは、生命力がスムーズに流れてないときで、生命力のブロックを取り除く必要がある。
すると流れが復活して健康になる、と。

これが中国でいうところの“気”の正体でしょうか?
インドならプラーナと表現するもの?
気功の姿勢というのは、天と地の間に人がいる、が基本です。
手を伸ばして天のエネルギーをもらい、足の下の地面からは地のエネルギーを吸い上げる。

採気といって、からだに気を取り込む訓練もあります。
木とエネルギーの交歓をします。そのときの木はなるべく姿形がよいものを選ぶこと。
健康な木は真っすぐにすくすく育っていますから力があります。
私はよく庭の榎の大木と交歓をしています。木からエネルギーをもらい、木にエネルギーを与える。
よく木に抱きつく人がいますが、「エネルギーが強すぎる木だと自分のエネルギーを吸い取られるよ」と気功の師匠は笑います。

太陽のエネルギーを目から取り入れるやり方もあります。
昼間の太陽は強すぎるので、昇ったばかりの朝の太陽。瞬きをせずにじっと太陽を見つめます。
やってみると、あんがい目がつぶれずに太陽を見つめることができるものですね。
やりすぎて目の中の黄色い斑点が消えずに困ったことがありました。

空気から直接エネルギーを取り入れるやり方もあります。
食気。道教の修行者が山の中で飲まず食わすに何か月も過ごすことができるのはこれ。
私も練習しましたが、空気ばかり胃腸に入ってお腹いっぱいになってしまいました。未熟者、ですね。

ところで、誰だって自分の気を充実させたいですよね。でもどうやって?
気の生成には3方向があります。

① 先天的に父母から受け継いだもの。生まれつき丈夫な子、虚弱な子がいますよね。→
② 後天的に飲食物から摂取したもの。後からしっかり食べれば丈夫になれる。→脾胃
③ 自然界の清気。自然の大気から吸い込んだもの。→

つまり、脾胃が大事。この中で、特に脾胃の働き(運化=食べ物を消化吸収して全身に栄養を送る)が最も重要だとされています。
気を充実させようと思ったら、胃腸を丈夫にしてくださいな。

気が乱れたときの症状や対処方法については、また別の機会にお話ししますね。

田村亮子
国際中医師 国際医学気功師、国際中医薬膳師。
50カラット会議時代から週1回私たちに気功指南して、現在は水曜日10時からオンライン講座がある。