只今入院中。初めてがいっぱい、発見がいっぱい。
只今入院中。
初めてがいっぱい、発見がいっぱい。
ただいま私、整形外科に膝の修理で入院中。
ことの始まりは去年の冬の初めです。
立ち上がって一歩足を踏みだしたら、突然体の中でバキッとすごい音がして、右膝に一瞬激痛、イテテテテ。我慢すれば歩けるので、畑作業をしたり、犬の散歩をしたり、いつもと同じに動いていたのですが、次の日になって、だーめだ、これ、普通のことじゃない。病院に駆け込みました。
まず医者に
「これって自然治癒しますか?自力回復しますか?」
「しません」
全てを医師に任せて、いうとおりにすると決めました。
それから9ヶ月経って、手術をすることになりました。5、6週間の入院と言われました。えー!思わず声を上げてしまいました。入院経験はあるけれど、そんなに長いのは初めてです。でも全て任せると決めちゃってるもんな。今更やめるとは言えないよな。船は港を離れました。もう引き返せない。
外科の入院は、体は元気、でも動けない。思いっきり退屈するよと体験者が言います。
本を読もう、読みかけの本、まだ読んでいなかった本、もう一度読みたい本。探せば本棚にたくさんありました。電子図書もあります。
映画をみよう。面白い映画がありますかーと友人たちに声をかけたら、入院一回では足りないほどの情報が飛び込んできました。
インターネットのおかげで、今は暇つぶしには事欠かないいい時代です。
そしていよいよ手術の日。ちょっとドキドキします。
「ダンさーん、行きましょー」ナースの後について、歩いて手術室に行って、ヨイショっと手術台に乗って……目が覚めたら病室のベッドの上にいました。
足は痛くはない。やたら重い。首を持ち上げてどうなっているのか見たら、包帯がぐるぐるに巻かれて、さらにその上に硬い支柱の入ったぶ厚い布のガードを巻いて、曲げない様にぶつけない様に保護してあります。ちょっと見、アイスホッケーのゴールキーパーです。
翌朝、体のあちこちに刺してあった管が抜かれリハビリが始まりました。
最初は車椅子の乗り降りと動かし方。狭い部屋です。隅っこに突っ込んじゃったり方向転換がうまくいかなくてあちこちにぶつかったり、一人で四苦八苦の大騒動です。でも面白い。初めて動かす車椅子です。新しいおもちゃをもらった子供のように楽しんでいます。
病院生活には初めてがいっぱいありました。中でも大きな発見というか気づきと言ったら良いか、それは朝です。初めての形の朝に出会いました。 目が覚めるのは家にいる時と同じく朝5時です。歯を磨いて、顔を洗って、部屋着に着替えて、する事はそこで終わり。朝食は8時。まだ2時間余りあります。
入院した当初は、何が何だか、何が起こるか全くわからず、一日中うろうろおろおろしてたのが、1日の動きが少しづつわかってきて、心が落ち着いて、突然気がついたのです。何もしない朝って、大人になって初めてだということに。
朝は、1日で一番忙しい時間でした。やらなければならないことが山のようにあって、それらをいかに効率よくこなすか、無駄のない動線で、テキパキ手をうごかし、ご飯を作り洗濯をし、掃除をし、合間にラジオ体操をし、とにかく大車輪の朝だったのが、ポカーンと何もしないで、誰かが作ってくれた朝ごはんが運ばれて来るのを待つだけの朝。
ふと思いました。こういう朝が日常の人、いるかもなー。家事を全くせず、ご飯も人任せの男の朝って、こうなのかなー。
手術して2週間を過ぎました。朝5時に目が覚めて、歯を磨いて顔を洗ったら、水の入ったペットボトルを両手に持ってあげたり下げたり回したり。だんだん目が覚めてきます。
次はリハビリ士から出されている宿題、7種類の足の運動を3セットづつ。途中テレビ体操を入れて、終わると空調の効いた部屋でも汗ばんできます。ご飯にはまだ少し時間があります。昨日を思い出しながら日記を付けます。ボケの確認です。友達にLINEを送ります。一人じゃない、繋がっている感が嬉しい。
これが今の私のモーニングルーティンです。
自分のためだけの朝。朝だけでない。一日中、自分だけのこと、足を直すことだけを考えていれば良い。それをみんなが助けてくれている。なんという贅沢な毎日なんだろう。
入院生活は半分を過ぎました。リハビリの努力は回復に繋がると聞いて、1日も早く家に帰りたくて超真面目に取り組んでいるのですが、こんな贅沢な時間を体験した後の家庭生活への復帰、どうなるのか、元に戻るのか、新しく変わるのか、楽しみです。
機会あったら報告いたします。
2009年に住み慣れた東京の自宅を引き払い、舅の檀一雄の終の住処だった福岡県能古島へ移り住む。以来、自家菜園で土を耕し種を蒔き、四季折々のスローライフを楽しんでいます。 能古島の晴子スタイルは、『檀流スローライフ クッキング』でどうぞ。