2024年5月号

歌会は細胞を新しくする!

歌会は細胞を新しくする!

最も短い詩形は五七五の俳句であるということは有名だ。 その後に感情を吐露する七七をつけると短歌になるというおおざっぱなことで、短歌をはじめて何年になるだろうか。

じくじくした性格の私には短歌のほうが合うだろうと。 鉛筆と紙があればできるから老後の楽しみとして最高と思ったりした。 ところがコロナ禍で外にいけなくなると歌がまったくできなくなってしまった。

歌を作らなくなって1年くらいたったころzoom歌会への誘いがあった。 歌人Kさんを中心に数人が集まるという。年齢が若い! 20代から50代。大学院生、小説家、学校の先生、ジャーナリスト……輝く知識人ばかりだ。

勇気のないオーバーエイティは、かなり逡巡した。 が、「やる」か「やらない」かと迷ったら「やる」に賭けるというわが鉄則に従った。 これでひどい目に何度もあっているのに懲りないやつだ。

で、始まった歌会。月1度のペースで題詠1首(題はメンバーで回り持ちで決める)と自由詠4首を事前にメール送信。

相互批評をするが、だれに当たるかわからないので、予習は大切。言葉だけわかっても解釈できないことが多い。

先日の題詠は「ペットボトル」だった。
春暁のドアをひらいて一面のペットボトルの中の生殖
そして今回初参加者の自由詠
ポテトチップス・透明になるからだ・結論としてののり潮

うーん、めまいがする。

歌会はまず自作を読み上げ、第1評者が評釈、題詠含めてどの歌が一番好きかを述べる。 異論のある人は自由に意見、その後Kさんが歌評。最後に自分の歌の弁護もできる。
作品はそれ自体が完成品だから弁明を許さないというルールもありだが、この会では種明かし的弁明ができる。
それを聞いて驚いたり、そうならこういう読み方は?などのヒントが出たりして、面白い。 ちなみに掲出の題詠はゴミ屋敷に並べられているペットボトルをうたったそうだ。

Kさんのコメントは優しい口調ながらきつい。
「コンビニを出れば夜道に朧月沈丁花の濃い香りに満ちて」は、「夜道」「朧月」「沈丁花」がつきすぎ、「濃い」は不要とバサリ。

説明的散文的要素を排除する。さらに完結した短歌的世界を超えようとする。
そして位相の異なる世界に暴力的に飛ぶことを今回の歌会ではとくに強調していた。
教わる側もなかなかで、Kさんの題詠「ぐわしゃぐわしゃと潰れて形戻りゆくペットボトルのやうなり心」を評して、「心は何か置き換えられないか」「心は甘い」と。

2時間余、細胞が入れ替わったような気がする。
心身をフレッシュにするために短歌はいかがですか?

もりき真希
俳句が五七五の17文字で完結型なのに対して、上の句に感情を七七と足して吐露する31文字の短歌。じっくり己に向かい合う人だものね!頑固だけど優しい永〜い志垣の友だち。