団地暮らし日記
団地暮らし日記
「女が家を買うとき」で、シングル女性が家を買った心境と、家がないと老後困ることを綴り、シングル女性の背中を押してきた私が、70代になり団地に住んでいるとは、自分でも驚きだ。終いの棲家のつもりで買った目黒の3LDKのマンション。駅近で便利このうえない環境にあった大好きな家だったのに、手放してしまうとは、人生の先はわからないものだとつくづく思う。いえ、私がおっちょこちょいだからかもしれないが。
お気楽なひとり暮らしから母との同居。母の入院、介護問題。実家からの逃避。愛猫の死、母の死。実家の片付け、相続等の手続き、そこにきて兄弟の確執と、世間で起きうる大変なことを一気に体験した数年だった。ひとり身なのでお気楽に人生を終える予定だったが、人生の終盤に来て怒涛のごとく押し寄せた苦・・ああ、思い出しただけで胃が痛くなる。血圧が上がる。でも、この経験により私も少しは大人になったようだ。
母からの逃避先として実家の近くの団地の部屋を借りていたのだが、実家を手放したことから団地に私の荷物を運んだ。そこで、先の住まいについて考えようと思ったわけだ。しかし、普段は決断が早い私なのに、75歳という年齢が迷い地獄へといざなった。持ち家にこだわるのはなぜ、 いまから買うの? お金は老後資金に回した方がいいのでは?また若い時と違い引っ越すのが面倒くさくなっていた。ああ、でも、やっぱり団地で死ぬのは嫌だ。私のライフスタイルではないわ。いや・・・・でも、団地ほどひとり暮らしが便利で安心なところもないということも、住んでみてわかったことだった。
団地の嫌な面:美的感覚が合わない。これが普通の日本人なのかもしれないがおしゃれな人が数人しかいない。身なりのよくないオジサンとエレベーターに乗り合わせたときの違和感は半端ではない。でも、人柄はいいオジサンが多いのでなんとも言えない。部屋が1LDKで狭い。
団地の良い面:建物まわりの環境管理が行き届いている。いつもきれい。併設の公園に猫が沢山いる。ゴミ出し、粗大ごみがいつでも出せる。建物が頑丈。台風地震の不安なし。防犯の不安なし。部屋はリニューアルしてあるので新築同然。スーパーが併設されているので便利、駅から近い、眺めがいいなど。あら、こんなにいいことがあるじゃない。団地ってひとり身の味方だわ。
帯に短し、たすきに長しだ。満足する住まいなどない。決めるのは自分。それなのに、迷いに迷っているのは、ひとり身で老いていくことを考えてしまうからだ。同じひとり暮らしでも家族のいる人と、身内がまったくいない人では深刻さに違いがあるように思う。さあ「ケセラセラ」の精神でどこまでいけるのか。それとも・・・そんなことを考えながらも、今、この時を楽しく暮らしていくつもりだ。
女性の心理をルポしたり、一人暮らしの安全ネットワーク活動への持続努力には感服する。
バレエを踊り、シャンソンを歌いして、その「自分大好き!」の幸せぶりが周りを笑顔にしてきたエッセイスト。
SSSネットワーク活動は、http://www.ma-ju.com/でご覧ください。