田村亮子の気功指南

不老長寿

不老長寿

木も老いる

わが家の庭の樫の木が大木になって、このまま育ったらどこまで高くなってしまうのか、と心配しました。
ところがご安心。
種類にもよるけれど、だいたい木は100歳から300歳であまり伸びなくなるそうです。
背が伸びないかわりに、どんどん太っていく。
ただし、その状態も長くは続かず、体力が落ちていくから一番上の枝まで水が届けられなくなって、そこから枯れ始める。頭のてっぺんがはげてくる?
老人のように、老木も背が低くなるのです。

おまけに年をとると木は肌にシワがよります。
樹皮は若いうちはどんどん再生され、古い樹皮は剥がれおちるので肌はつるつるですが、老木になると深いシワが刻まれ、苔が生えてくる。だから、外見からその木が若いか年寄りかが一目瞭然。
(参考:『樹木たちの知られざる生活』ペーター・ヴールレーベン著)

現代の生物学的にみた老い

『動的平衡』を唱える福岡伸一先生によると、老化とは以下のようになります。

私達が住むこの宇宙において、輝けるものはいつかは錆び、水はやがて渇き、熱あるものは徐々に冷えていく。
時間の経過の中で、この流れに抗することはできない。
(これを“風化する”といってます。大きな岩だっていつかはサラサラの粉になる)

時間をもどすこと、つまり自然界の事物の流れを逆転することは、決してできない。これが『エントロピー増大の法則』。

生命はこの法則に先回りして、自らを壊し再構築している。これを『動的平衡』という。
しかし、長い間エントロピー増大の法則と追いかけっこしているうちに、摩耗し、酸化し、ミスが蓄積し、障害が起こり、やがてエントロピー増大に追い抜かれてしまう。
つまり秩序が保てない時が必ず来る。

老化の目立つ身体の一部に単一の原因を求め、単一の有効成分に救いを求めようとするのは、悪しき還元主義に陥っていると言わざるを得ない。
部分だけをみて、いくらシワや白髪に効くものを摂取しても、一時的には劇的な作用を示すけれども、まもなく身体はその揺れを戻して作用を無効にしようとする。
生命現象は動的平衡なのだから。

私達にできることは、生命現象が本来の仕組みを滞りなく発揮できるように、十分なエネルギーと栄養を摂り(秩序を壊しつつ再構築するのに細胞は多大なエネルギーと栄養を必要とする)、サスティナビリティを阻害するような人為的な因子やストレスをできるだけ避けること。

― だそうです。つまりは、老化とは共存するしかない。

気功が求める不老長寿

道教の気功はもともと不老長寿を目指してきたものです。
時間をもどすことはできないといわれますが、その時間をさかのぼって永遠の命を手に入れようしてきました。

宇宙の変化を逆方向に進める。
順に進むと人を生み物を生みますが、逆に進むと仙になり神になる。修練することで若返り、最後は胎児と同じ状態に変えようと目論みました。
数千年に渡る壮大な人体実験ですよね。

『神農本草経』という中国最古の薬物学書といわれるものがあります。植物だけでなく動物、鉱物、虫類など365種類の薬物があげられ、上品・中品・下品に分類されています。上品は無毒で、多量に長期間とっても人を損なわず体を軽くし気を増やし、老化せず長生きしたい人は服用する、と書かれています。

それなのに、上品のしょっぱなに毒のある丹砂が登場しています。なぜでしょう?

丹砂は、錬金術で黄金を作り出す原料になる鉱物です。
なぜそれほど金にこだわったのでしょうか。
「金の錆びない、酸化しない、永遠不滅の性質を体の中に取り込めば、人も永遠不滅になる」と考えたからです。
人は必ず老化して死んでいくことを、永遠に変化しない金の力で阻止しようとしたのですね。

或いは、丹砂から水銀、水銀から丹砂へと、何度でも変化しては元にもどり、永遠に循環する物質を体内に取り入れる。錬金術で作ったこのような化合物を飲んだ唐の皇帝たちが、中毒でバタバタ死んだという歴史があります。

その後、害が多いもの(外丹)ではなく、体内の修業(内丹)で不老長寿を目指す方法がいろいろ出てきます。
錬金術で体外でやっていたことを体内で行おうとします。これが内丹仙学。

そもそも内丹仙学は、古代の学者たちが探求してきた宇宙法則と人間の生命科学に対する学説の1つです。

『道教と仙学』胡孚学著 神坂風次郎訳 によると次のようです。
(難解です…。特殊な用語が多くて説明が長くなる)

宇宙の成り立ちから説いています。
何もない虚無の状態から気を生み出し、陰陽も分かれず動と静もない混沌状態から、陽が浮いて天となり、陰が降りて地となり、ついに陰陽交合して人間が生まれた。
(成り立ちにはもっと複雑な過程が説明してありますが)

宇宙の万物には、すべて生成から死滅への過程があり、“虚無”だけが唯一永久不変不滅のものである、としています。虚の中には物はなく、質も象もないから、天地が崩壊しても虚だけは崩壊することがない。

だから、人間は修練によって宇宙の変化を永久不変の“虚無”の状態へと「逆」方向に進むことができる、としています。

内丹の修練法の原理と効用も書かれていますが、修練法の理論は複雑なので省略。
効用の部分だけ簡潔に抜粋します。内丹を修練すればこうなる、ということ。

① 人生観を変え、行動様式の改変を促す。
→ 人と争わず、世俗を超越し、自由で気ままに考えられるようになる。

荘子のいう何ものにもとらわれない「逍遥遊」「恬淡無為」の境地でしょうか?周りに惑わされず、心が自由になる。

② 自我を制御し、自己の気質を変化させ、自身で情緒を調整できるようになる。
→ 自分の嫌な性格を変え、感情をコントロールできるようになる。怒ったり、落ち込んだり、嫉妬したり等々のマイナス思考をプラス思考に変える?

内丹の修練方法は、人体の内分泌腺の集まったところにあるので(性腺、松果体、脳下垂体、肝臓、胆嚢、脾臓、前立腺など)の内分泌を活発にすることによって、神経系統を調節して全身を調和のとれた状態にする。日常生活でのよくない刺激にも適応して、それを楽しむという意欲を持ち続けるようになる。

③ 人体の潜在エネルギーを目覚めさせ、脳の奥深くに眠る智慧を開発する。
→ いわゆる超能力ですよね。
脳の深く眠っている潜在的な力、智慧を発掘する。

意識の活動を抑え、潜在意識までも制御し、その奥の「無意識層」にまで達する。
人間の長い進化の中で蓄積された億万年の記憶・情報を解放する、ということかな?
ものすごい能力ですよね。

④ 体質を改善し、病を取り除き、生命力を奮い起こす。
→ これが若返り、ですね。

内丹功法を修習した人は、顔が少年(少女)のようでいつまでも若く、身体は力強く、脳の働きは緻密で盛ん。老いを返上して童に還る。

⑤ 寿命をのばし、生死を超えてしまう。
→ これが本命、不老長寿の域です。

「もし不死であろうとするならば、死ななければならない」。最後の段階で、「大死七日」で冬眠状態になって新陳代謝を最低限まで落とすそうです。

「眠る気功」があると聞いたことがあります。冬眠状態のまま長い期間を眠り続けることか。
さらには生死を脱し、超えるという「虚空粉砕」という仕上げの段階に。

修業方法は秘伝なので、真の師について教えを受けろ、と書いてあります。

これからどんなに修行しても、とても最後の段階まで到達できるとは思えないから、とりあえずは穏やかな心境で、健やかな体調であればいいか、と思っています。

みなさまと一緒にやっている「仙人長寿功」と「還童功」どちらも名前の通り若返り、長寿を目指す気功ですから、必ず効果あり!!!と信じています。

田村亮子
国際中医師 国際医学気功師、国際中医薬膳師。
50カラット会議時代から週1回私たちに気功指南して、現在は水曜日10時からオンライン講座がある。